研究の概要
Noda epileptic rat (NER)は、てんかんのモデルラットで強直間代発作を発症します。 約2か月齢頃から、突然立ち止まる、前肢を持ち上げる、頸部のけいれん、飛び上がりなどの異常行動を示します。 4か月齢までに、すべての個体は、全身性の強直間代発作(Generilized tonic-clonic seizure; GTCS)を呈します。
今回、我々はNERとF344から得られた戻し交雑子とコンジェニック系統を用いてGTCSの発症に係る遺伝子座を見つけました。 また、網羅的遺伝子発現解析によって、GTCSの候補遺伝子を同定しました。
GTCSに係る遺伝子座は、ラット第1染色体のNer1と第5染色体のNer3と名付けられました。コンジェニックラットを用いた解析から、Ner1とNer3が協調してGTCSの発症に関与していることが判明しました。 網羅的遺伝子発現解析から、Ner1内の候補遺伝子としてコレシストキニンB受容体遺伝子(Cckbr)とSt5遺伝子が見出されました。また、Ner3の候補遺伝子としてPHDフィンガータンパク24(Phf24)が見出されました。
ゲノム解析の結果、NERのPhf24遺伝子のイントロン2に内在性レトロウイスルの配列が挿入されていることがわかりました。 また、NERではPHF24タンパク質が全く発現していないことがわかりました。
以上のことから、Ner3の候補遺伝子としてPhf24が、Ner1の候補遺伝子としてCckrbとSt5が同定されました。
Phf24は抑制性のGタンパク質と相互作用し、GABAB受容体の調節に係っていることが知られています。 また、GABAB受容体は高電位活性型カルシウムチャネルを調節していることが知られています。 NERでは、Phf24遺伝子の不活化によって、GABAB受容体を介したカルシムチャネルの制御に問題があり、それがGTCSの発症に関与している可能性があります。
NERラットはナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」から提供されています。
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