Tremor dominant Kyoto (Trdk)ラットは、離乳時より全身性の振戦を示します。この振戦は優性遺伝することから、原因遺伝子はTrdkと名付けられました。
Trdkラットの振戦は、ヒトの本態性振戦の治療薬で抑制されますが、パーキンソン病振戦の治療薬では抑制されませんでした。 そのため、Trdkラットの振戦は、ヒトの本態性振戦に相当すると考えられました。
また、遺伝解析を行ったところ、Trdkラットには、Kcnn2遺伝子にI289Nミスセンス変異があることがわかりました。
Kcnn2遺伝子は、SK2チャネルというCa2+によって活性化されるK+イオンチャネルをコードしています。 そこで、I289N型のSK2チャネルを培養細胞に人工的に発現させたところ、K+電流が著しく減弱することがわかりました。
以上のことから、Kcnn2遺伝子のI289N変異は、Trdkラットにおける振戦の原因変異であると結論しました。
マウスでも、Kcnn2遺伝子に変異をもつものは、振戦を示します。しかし、いずれも劣性遺伝します。今回見つかったTrdkラットでは、振戦は優性遺伝し、ホモ個体は胎生致死となります。 種によって、同じ遺伝子に変異があっても遺伝様式が異なることが示唆されます。
本研究の内容は、2017年9月、Brain Reserch 誌に掲載されました。
Trdkラットはナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」から提供されています。
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