今回紹介するのは、『家畜化という進化―人間はいかに動物を変えたか』という本です。作家はリチャード・C・フランシスというサイエンスライター。原題は"Domesticated, Evolution in a Man-Made World"。
名古屋大学医学研究科動物実験施設の大野先生の紹介で手に取りました。
イヌの祖先はオオカミ、ウシの祖先はオーロックスという体高2mもある動物でした。凶暴で人の生活圏内には入ってこないような動物が長い時間をかけて家畜化されてきたわけですが、その最初のステップはどのようなものだったのでしょうか?
家畜化に対する私のイメージは、野生動物を無理やり飼いならして家畜とする、というものでした。しかし、この本によると、家畜化の過程をスタートするのは、人間ではなく動物自身であるそうです。つまり、動物が人間を怖がらずに、人間のすぐそばで生活するようになるのが、家畜化の第一歩なのです。
人慣れ(self-taming)することにより、人間が出したごみをあさり、それを食べ、自身の消化システムをも変えていきます。例えば、オオカミは肉食ですが、イヌは雑食ですよね。家畜化の過程で植物性の食べ物を効率よく消化できるようになった動物がイヌになったのです。
このような家畜化に関する理論に加え、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなど色々な家畜に関する家畜化の過程が描かれています。かなり専門的な語句等が出てくるので学部生には難しいかもしれませんが、自分の興味のある家畜の章を選んで、読んでみるのもよいと思います。
対象:大学院生、学部生、動物に興味がある、進化に興味がある
Next Book:『ヒト、イヌに会う』島 泰三
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