今回紹介するのは、『ヒト、イヌに会うー言葉と論理の始原へ』という本です。作家は島 泰三。 元日本野生生物研究センター主任研究員。マダガスカルでアイアイの保護にも取り組んでいました。
農大厚木の学術情報センターで手に取りました。
作者の島は、ヒトとイヌとの出会いは極限状態(氷河時代の極東)のもとであったとします。そのような極限状態でヒトとイヌは共存し始めました。そこでは、感情に左右されない明確で短い命令がヒトとイヌとのコミュニケーションの手段になります。
ヒトとイヌが出会った極限状態というのは、現在で言えばどのような状態でしょうか?島は、アラスカや南極大陸での探検、イノシシ猟、地雷探知を挙げます。いずれもちょっとしたミスが生死にかかわります。このような状況では、感情を交えない、単なる音声としての言葉がイヌとヒトとの間で意味を持つようになります。
感情的になっているヒトの言葉は、イヌに聞き流されます。
なぜか?
感情は不安定だからです。情報として信頼がおけません。
「言葉をかける相手を自分と同等かそれ以上と認めて語りかけるときに、言葉は初めて人間の不安定な感情に左右されない音声記号となり、イヌとの間で意味を持つようになる。」(P.233)
教師と生徒、親と子供など人と人との間で交わされる言葉についてもあてはまる気がします。
対象:学部生、大学院生、イヌを飼っている、狩猟に興味がある、言葉に興味がある
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