今回紹介するのは、『分解者たち 見沼田んぼのほとりを生きる』という本です。作家は猪瀬浩平。1978年浦和市生まれ。明治学院大学専任教員、見沼田んぼ福祉農園事務局長。
農大厚木の学術情報センターで手に取りました。
見沼田んぼとは、埼玉県南部に広がる農的緑地空間です。東京都心から20~30km圏内に位置し、総面積は約1260ヘクタール、東京都の豊島区とほぼ同じ面積です。
見沼という地名には身覚えがありました。「kazusaya」という、とてもおいしいドイツハム・ソーセージ屋さんがあるのです。一度車でkazusaya屋さんを訪れたことがあるのですが、首都高のインターを降りると田んぼ(低地)が広がっています。あの辺りが見沼田んぼだったと、この本を読んで知りました。
さて、内容ですが、この本では「とるに足らない」とされてきたものたちの生きていた姿、営んできたこと、残したものを描いています。例えば、作者の兄は自閉症なのですが、普通高校への入学を求めて支援者たちとともに埼玉県庁の知事室を占拠します。そこへ至った過程、当時の様子、その後を書き残しています。その他に、見沼の朝鮮人学校とのかかわりなどを描きます。
この中で、「とるに足らない」とされてきたものたちを、地域のしがらみを編みなおす「分解者」として捉えなおします。つまり、生態学でいう有機物を無機化し、「生産者」が再び利用できる形態する「分解者」のアナロジーです。
対象:学部生、大学院生、農業に興味がある、市民運動に興味がある、ボランティアに興味がある
Comments